「GIFT」によせて2012/09/12

前作 「To ( melt into ) 」「(Two) into holy」を経て、「GIFT」という作品を作りました。
僕には、これまでに出来なかったことや、やらなかったことが山のようにあります。
そんな僕にとって、THE NOVEMBERSにとって「GIFT」は試みに満ちた作品です。

今日を迎えることを祝福し、明日が来ることを祈るような作品、言葉でも、言葉以外でも、目の前にいる誰かに語りかけるような作品を作りたいと僕は考えました。
誰かが「自分の」足で立って、「自分で」歩き出す時にそっと背中を押すような、そんな想いを込めました。
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「笑顔が見たい」M-1.Moiré
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笑顔は素敵だな、と僕は思います。人はどんな時に笑うのでしょうか。楽しいとき、嬉しいとき、困ったとき、誰かを差別するとき、馬鹿にするとき、、、
音楽に人格はありませんが、それは様々な時代に、様々な場所で、様々なものに加担してきました。商業に、政治に、戦争に、犯罪に、生活に、恋に加担してきました。

(「普遍的な」豊かさなどこの世に存在しませんが)僕は心身の豊かさに価値を置きます。どんな時に笑い、どんなものに加担するかを、意識的に選びます。
聴く人にとって、僕の音楽が豊かさの「理由」でなくてもいい。僕の音楽に触れた後に、その人の周りの風景が違って見えたりして、そこで笑顔になるような何かに出会えたら、僕はその「きっかけ」になれたことをとても嬉しく思うのです。

美味しいお蕎麦屋さん より抜粋。
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この「GIFT」という言葉は、贈り物、才能、などの意味の他に配偶子卵管内移植(Gamete Intra-Fallopian Transfer)という医学用語としても使われていることを偶然知りました。今回の制作の方法、環境もまた試みの連続であり、それらを表すのに(Gamete Intra-Fallopian Transfer)という言葉が適していると感じ、作品名にしました。(このことに関しては、後のインタビューや、記事などで話すつもりです。)
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最後に、今作はXTC「Apple Venus Vol.1」に触発されたことを記しておきます。
“Do what you will but harm none ”

嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、辛いことも、まだまだ、これから。旅立つ誰か、残された誰か、それぞれの明日を祈っています。

小林祐介