こころをひらいて2020/12/11
dip「feu follet」を聴きながらこれを書いている。
もうすぐ “TOUR Romancé” LIVE AT STUDIO COASTのアーカイブが終わって12月11日がやってくる。
21時には『Live「At The Beginning」』の配信が始まる。
11月はとっくに過ぎて、もう12月は半ば。2020年ももう終わるけれど、我々にとってはここからが本番。
無観客のシークレットギグとはいえ『Live「At The Beginning」』は正真正銘今年最初で最後のライブです。
去年の12月以来我々は人前で演奏をしていないけれど、まさかこんなことになるとは思わなかったというのが正直な気持ち。
(Photo by Daisuke Miyashita)
“しばらくライブをしていない”という事実に対する、いまの社会の状況がどうこうといった話というよりは、自分自身の気持ちの話。
「At The Beginning」をリリースし、ツアーが延期となり、中止となり、しばらくの間THE NOVEMBERSは全く活動をしていなかった。
こういう方針でいこう、とか、このくらい休もうとか、そんな話さえしないままにいつのまにかバンドは何もしなくなっていた。
誤解のなきよう書いておくと、メンバーの仲が悪くなったとか何か特別な事情があったとかでは一切なく、本当に自然とそうなっていった。連絡もほとんど取らなかったし、それぞれが何をしてるかもよくわからないような時間が続いた。誰かが、何かを言い出すのを、全員が待っていたような。
僕はというと、観たかった映画や、読みたかった本や、聴きたかった音楽、調べたかった情報や勉強したかった物事など、いろんなものをマイペースにインプットしていった(こんな時間を過ごしたのはいつ以来だろう、一人暮らしを始めて膨大な自分の時間と付き合うことに夢中だった18-20歳くらいのころ以来だろうか)。
並行して、BOOM BOOM SATELLITES中野さんと組んだ新しいバンドの曲作りなどを週一で行なっていた(このプロジェクトについては後ほどしっかりと書こうと思います)。
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いま自分にとっての大きなテーマは、自分の感性・ハートに従う、自分自身を丁重に扱うこと、心を開くことだ。
どれも頭ではわかっていたこと、言葉では言っていたことだけれど、それが何なのか、どういう状態なのか、僕はわかっていなかった。
バンドを休んでいる間、ほぼ何年も日課になっていた「曲やアイデア、何かを作る」ということを僕はやめてみた。
自分が「作りたい、やりたい」と思うまで何もやらないと決めて、僕はその都度自分がやりたいことだけをやっていった。
どうせ、すぐに曲を作りたくなるに決まってると僕は思っていた。しかし、その欲求はなかなかやってこなかった。
楽しいけど何か満たされない、そんな飢餓感もやってこなかった。
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夏が終わった頃、何かドラマティックなきっかけや出来事があったわけでないけれど、それは唐突に、そして静かにやってきた。
新曲を作りたいとか、ライブをやりたいとかそういうことよりもっと単純に「あーバンドやりたいなー」といったシンプルな欲求がわいてきた。すぐに来週からスタジオ入ろうとメンバーに声をかけ、「At The Beginning」の楽曲のセッションを始めた。
メンバーとは久しぶりに会うし、スタジオなんてもっと久しぶりだったけれど、何一つ懐かしさや特別な感動もなく、淡々といつも通りの我々がそこにいた。つい先週まで普通に会っていたし、スタジオにも入っていた。そんな風に思えるくらい。
思えば、今年我々THE NOVEMBERSは結成15周年だったんだ。15年も一緒にやってるとほんの数ヶ月のブランクなんてないようなものですよ、って話がしたいわけじゃない(やっぱり自分も含めてみんな演奏下手くそになってたし)。
でも「バンドやりたいな」って思ってやった「バンド」ってやっぱりいいもんです。
自分のハートに従うのがいいんだと思った。ハートが先陣を切って何かを求めたり大切にしたり愛したりする。
そんな自分の本当の部分を決して蔑ろにしないこと。自分が欲しかったものはこれなのかもしれない、とほんのちょっとわかりかけたのが2020年一番の収穫だった。
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やってこなかったTOUR “消失点”、そこで観れたはずの景色に未練はない。
またいい未来で会いましょう。心を開いて、もう一度初めましてを言うような気持ちで。
(Photo by Daisuke Miyashita)
小林祐介