ヘッドフォンゴースト2010/05/10

tobaccojuiceのヘッドフォンゴーストという曲を聴いている。胸がふるえている。「HEADPHONE GHOST」という作品に収録されているよ。頂いた新譜「どこまでも行けるさ」をここ最近よく聴いていて、共演した夜を思い出しながら感じ入っていたのだが、「HEADPHONE GHOST」もまた素晴らしい作品。過去のCDを揃えようかな。
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次は新潟でギグ、共演は「mudy no the 昨晩」と「Qomolangma Tomato」。
チケット代+1ステロイド¥500の日だからそのつもりでね、新潟に塩湖を作ろうよ。
JUNK BOX mini is NOT miniくらいの気持ちでさ。

その次は仙台MACANAでギグ。マカナだけに、マサカのマナカナと共演。くらいの気持ちで眼帯代わりに牛タンつけておいで。それがモラルってもんですよ。
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今朝、僕は通勤途中に女性と口論になった。おそらく20代前半であろう、いかにも気が強そうで自尊心の塊のような吉高 由里子似の美女であった。自分が美しいということを知っていて、愛する人にさえぞんざいな扱いをすることを何とも思っていないような女。嘘っぽいアヒル口を浮かべた女。すね以下、くるぶし以上の丈の靴下とブーツを着用している女。どれもこれも、素晴らしく好みだった。(ちなみに、まったくの正反対の女性だったらどうか、という質問に答えるとしたら「素晴らしく好みだ」と答えるであろう。)

話を戻そう、今朝僕は都営大江戸線に乗りながら、CDウォークマンをもってしてマイブラッディバレンタインをごく小音で聴いていた。作品は世界の名盤「Loveless」である。なぜ小音かというと、以前僕が大音量の音漏れを初老の紳士に注意された時に、そのまま彼が僕のバンドに加入してしまうという出来事があったからだ。逆らえなかった、悪いのは僕だったから。(いまではまるで20代のような見た目になり、畳一枚分ほどのエフェクターを二日酔いに起因する千鳥足で巧妙に操りながら、肥大した自意識とガムテープまみれのギターを振り回している。そして電車において、どんなに空席があろうとも彼は優先席を選ぶ。いや優先席に選ばれたのである、優先的に。)

話を戻そう、マイブラッディバレンタインの世界的名盤「Loveless」をごく小音で聴いていた僕に、一人の美女が声をかけてきた。
「それマイブラでしょう、なんでそんな小さな音で聴いているのよ」と女は言った。
僕はその時、彼女が何を言っているのかが聞き取れなかったので、深い慈愛と厳しさに満ちた菩薩のような表情を浮かべながら言った。
「栃木発ボリビア経由、対韓流音楽の最終兵器の新作、いかがかね」
次の瞬間、雷鳴のような音とともに僕は床に崩れ落ちた。何が起こったのかはわからなかったが、とにかく「ヤバい」ということはわかった。視線を上げると、まるでパナップのCMに出演している吉高 由里子のような表情を浮かべた女がこっちを見ていた。
あぁ、きっと僕はこの女にどつき回されたんだな、悪くないじゃないか。そう思ったのもつかの間、以前僕を改心させた初老の紳士がカウントをとりはじめている。
「ワーンッ!ツー!スリー!フォー!」
僕は、慌てて立ち上がり、まだやれる、まだやれるさ、ほら、ファイティングポーズ。と必死にアピールをしたが、紳士は優しく首をふり、カウントを止めようとしない。
「セブーンッ!エーイトッ!ナーインッ!」紳士の眼光が鋭くなる。
南無三、僕は心のなかで唱え、これまでの日々を思い出した。イジメ、ボクシングとの出会い、初めての勝利、過酷な減量、愛する妻、海の向こうで僕を待っているライバル。最後の力を振り絞り僕は叫んだ。
「やれます!」
「テーンッ!!!」初老の紳士は声高らかに叫んだ。彼はまるで過激な爆発のシーンをくぐり抜けた後のランボーのようだった。
僕は呆然と立ち尽くしてしまった。小谷美紗子さんの「こんな風にして終わるもの」という曲を思い出した。僕は負けたんだ。試合前の僕はあっけなく損なわれてしまった。内股で膝から崩れ落ちた自分がガラスに映る。まるでシド•ヴィシャス、だな。と僕は自身を嗜めた。
そして次の瞬間、試合終了のゴングを待つ僕の耳に思いもよらぬものが飛び込んできた。
「イレブーンッ!トウェルーブッ!サーティーンッ!」ランボーは変わらぬ表情でカウントを続けている。おそらく、彼自身のために。


そんなことがあって、僕はその女性とその後口論になった。後に靴下とブーツの丈を褒めて和解を図った。もう一度どつかれたが、そこには何事にも勝る達成感があった。僕の心にはマイブラの「What You Want」が流れていた。小音で。
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中略の文字は見えなくなっています。

小林祐介