ファクトリー2009/05/20

18歳のころから続けている藤沢の工場のアルバイト、時給は2980円、実働8時間、土日祝日は休み。

僕は今37歳(今年で38歳)だが、これでも職場では最年少なのである。なので、いまだに50,60歳の先輩方には「金髪の坊や」なんて呼ばれている。そんなところは娘や妻には見せたくはないが、結局のところ僕のことを誰が何と呼ぼうがそれは相手の自由であるし、仮に「坊や」と呼ばれたくないという旨を伝えるのならば、それ相応の代わりの呼び名をこさえ、提案しなくては筋が通らない。例:「小林くん」

そんなアットホームな職場に最近新人さんが入った。この職場は基本的にどこにも求人情報を出してはおらず、完全紹介制(かつ厳正な審査が有る)である。当の僕はというと、渋谷は宇田川町トップランカー、MCケンゴくんに紹介して頂いた、感謝。(彼は最初MCとしてノベンバーズに参加した、その後ダンサー、DJ、VJ、マネージャーを経て現在のギターという役割を得たのである、下積み苦節15年。「そういえば俺ギター弾けるんダッタヨ」)

話は逸れたが、その新人さん、おそらく10代後半であろう、かわいらしい女の子なのである。悲しいかな、その教育係に僕は抜擢されてしまった。気が重い。おかげでスタジオでも散漫な音を出してしまい、メンバーからタコ殴りにされた、とんだ災難だ(あくまで新人さんのせいである)。

そして今日仕事の内容を簡単に説明した。
「いろいろ機械があるから最初は戸惑うかもしれないけれど、僕たちが受け持つ範囲は、この赤いランプと黄色いボタンだけだから、それ以外は触っちゃだめだよ、何でかは僕も知らないけれどね。」

『…はい。』

「…具体的な作業はすごく単純だから安心していいよ。この赤いランプが一時間に一回点くから、そうしたら5秒以内に黄色いボタンを押してそれを消す、これだけ。」

『…これって何の仕事なんですか。』

「…、おいおい、何の仕事とはご挨拶だなぁ、仕事に何もヘチマもありませんよ。とりあえず、さっそく作業をしてくれたまえ、くれぐれもランプから目を離さないようにね。」

平静を装うことがこんなに大変だとは思わなかった、衝撃だった。「これは何の仕事か」僕は20年近くこの仕事を続けてきて、そんなことを考えたことがなかった。おそらくここの従業員は皆そうであろう。考えていることといえば、その日のランチのことだったり、上野の阿修羅展のことくらいであろう。夜が決まって暗いように、キリンの首が長いように、「赤いランプ」は当たり前に「黄色いボタン」で消すものだと思っていた。あぁ、気が狂いそうだ。

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kantannidamasarecha,damedayo
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いま新曲の素材の音源を聴きながらこれを書いている。上の文章を見て、我ながら飽きっぽいなと感心してしまった。すべて放り投げて終了、なぜなら責任がないからです。仕事ではないからです。

小林祐介